数か月前、我が元父の諸々の整理を済ませました。(前記・ゴキ屋敷整実録記から7年経過して)
男としては寿命が長かったといわれる年齢で、男性で九十一年を越す割合は実際百人に一人くらいでしょうか・・(武士の居た時代には到底考えられなかった寿命でしょう!)
故人になるのは勝手ですが、この人間社会にはその後のかたずけや処理手続きが本当にたくさんあって、そんな様々な整理を誰かがしなければならないということも知っておくべきなのです。森や野原に住んでいる昆虫や鳥獣のように自然にほったらかしとはいかないのですから・・
今回は故人の様々な(一連の)整理を終えて、解ったこと・思えたことを一つの記事として綴っておきたいと思います。
足を突っ込んでしまってから7年の月日が経過し、ついに今回の後処理が訪れたわけですが(必ずいつかは訪れるとは分かっていたこと)いざ実際に来ると様々なことをやらねばいけないと知ることになります。
ことは今から7~8年前、疎遠だった元父について連絡が入りました。脳梗塞によって下半身が動かせなくなったと・・詳しくはこちらの記で
その昔、小学生の兄弟を母と祖母に任せて自由気ままに出て行った父親でした。
たとえ収入が少なくて貧しい家庭でも、真面目に家族のことを思っている親であればいいのですが
しかし家族を捨てて自分だけ自由気ままに生きていくというその無責任さは、この地球上に生きている哺乳類生物としても失格なのです!
その後残された我々家族は母親に秘められた強い運勢と力によって生き延びていったわけですが、自由に生きてきた彼は長年どう思って生きていたのでしょうか・・それは今でも思うことです。
長年そんな好き勝手に自由気ままで生きていても、やがて老いていき体の調子が悪くなっていくと、誰かに助けを求めていくものです。(人を助けてきたこともないにもかかわらず、いざという時には誰かに助けを求めるのです)
その日ちょうど新聞集金員の訪問があり、下半身が動かなくなってしまったことが民生員から行政の福祉担当へ伝えられました。
そして行政から私の所へ連絡が入ります。貴方の父がこういう状態になったと・・(つまり介護保険の諸々手続きを行って今後の養護をしてほしいということ)
家族を捨てて養育費や生活費なども支援してこなく自由気ままに生きていた身勝手な親を、40年経って老いてきたから世話をしてくれって?
この不条理なことを思うと嫌気がさすものでしたが同時に、彼に長年の償いをさせるには生きているうちの今しかないと思う考えも起こったのでした。
結局、前記のことを始めることになってからを皮切りに、こうして諸々の世話面倒を7年やることになったわけです。
7年前当時、軽い脳梗塞だった様で再び下半身は動かせるようにはなったとはいえ、もう一人では買い物も行けなくなってしまった体になった為、福祉デイサービスにも7年もの間お世話になってきましたが、果たして彼は介護員の方々にも感謝の気持ちをもっていたのでしょうか・・。
この7年間、文句を言いながらも故人となる最後まで様々な事をきちんとやってきました(というかやらされてきました)。40年前の元息子という立場を関係者には伝えながらも、まるでそれが無かったかの様に普通の血縁家族として様々な要請に対応してきました。
ゴキ屋敷だった平屋借家のリフォーム工事後にここで福祉介護ヘルパー&デイサービスがスタートしたわけですが、相当に古い家屋のためこの点も含め度々いろいろな要請があったわけです。(介護担当者からも)
部屋の掃除はヘルパーさんもあまりしない様で(本人も当然しないので)、私が訪問する度に気が付くと部屋の隅天井などに作ってある蜘蛛の巣を綿菓子にする程に清掃もしてきましたが、その他に↓
「周囲に雑草が沢山出たので除草してください!」とか「ガラスが割れたから直して!」や「サッシのカギが壊れたから直して!」「ゴキブリが出たから対処して!」「台所の水道が壊れたので修理して!」「靴下や下着パンツ類を買ってきて!」「テレビが壊れたので新しく買ってきて!」「オムツが足りないので次回買ってきてください」「巻き寿司が食べたいと言っています!」「冬の乾燥で喉が潤っていないので加湿器を買って!」「扇風機が壊れたので直すか交換必要です!」「トイレにうじが出たので薬品を撒いて下さい!」「台所にナメクジが出たので・・」「蛍光灯が切れたので交換してください」「チョコが食べたいと言っています!」などなど、他にも沢山ありましたが覚えていませんのでこれくらいに。(中でもエアコンは最近新品に替えたばかりで今回の遺品整理処分となったのは勿体なかったと、今思い出しました・・)
身勝手で遊び人だった彼でしたが家族運以外は運が良かった様で、嘘も付けてそこそこの年金を得られ経済的には恵まれていたのですが性格が性格だけに、保険も貯蓄も全くしていなくパチンコに40年を費やしていたのです。(競馬などの頭を使うギャンブルはできなかった)
独り身で生活していて年齢をとっていても体が動くうちは先のことなど考えずに遊んでいられたのですが、体が不自由になって身を知る時がやがて来るわけです。
子を持った普通の考えでは、自分には子供がいるので孫もいるので少しくらいは保険や貯蓄を考えると思います。(ギリギリ生活だったなら別ですが、彼には計算上で経済的余裕があったはずなので)
7年前に始まった時、彼は全くと言っていいほど貯蓄もなくリフォーム工事は私がDIYでやるしか余裕がありませんでしたが、そこからは私がしっかりと管理&節約DIYにより彼がすべきであった孫への支援と母への長年の償いを仲介できるようになっていきました。(コツコツと僅かでも)
今あらためて思えば、彼が経済的に余裕がなかった場合は当然に償いの余裕もなく逆に負担をしなければならなかったでしょうから、おそらく行政に委ねていたかもしれません。
こういう点でも彼は運が良い人生だったと思います。その人生最後の処理・整理まで面倒をみてくれた40年前の元息子が居たわけですから・・(飛ぶ父.後を濁さずみたいに)
毎月の家賃や光熱費の支払い、確定申告(住民税)や介護費の清算申請提出、介護施設との要請のやりとり&支払い手続き、家電の修理や買替手配、必要生活品消耗品の買い物など元息子に全てやってもらえてたのですから・・
そして最後の締めくくりでは、葬儀手配や市役所への住民課、介護福祉課、障害者課などへ各種届出は終えるのに合計2時間もかかって何回も住所と名前を2回づつ記入させられて、腱鞘炎になるほどに手首が疲れたのを覚えてます。
その後に水道課へ止水届け清算手続き、電気も連絡して解約手続き、ケーブルテレビも解約で工事手配で待ち合わせ、しかし一番手間がかかったのは生活用品ゴミ衣類や家電家具類の整理処分を伴う借家のかたずけでした。
すでにごみ屋敷は以前のDIYリフォームで解消していたので、必要最小限の衣類や家具類、家電類にしていたので2tトラック一台ほど手配すればほぼ整理できたのです。そして近所や借家の大家さんへのお知らせと最後の家賃支払いなど、住居関係も無事に済ましました。
最後に残った仕事は年金事務所への届出でしたが、これは予約してから1カ月もかかってやっと受付となり本当にいろいろと後処理があることを痛感したのでした。
こうして一連の整理や手続きを済ませたのですが、当然に費用もかかりました。葬儀関係の費用や最後の介護施設料、家賃や光熱費や回収トラック費など最終の年金額では足りなかったのですが、この時のための葬祭用貯蓄をしておいたので対処できたわけです。
近年、ニュースでも孤独死が多くなっていますが、同居人が居なかったり親しい知人・友人も居なかった場合、誰も気が付かないでそのままの状態になっているわけです。
先日も暫く会っていなかった知人が独りアパートで亡くなっていたと風の便りで知らされましたが、勤め先がありその同僚から発見され手配してくれたから良かったものの、私の行った様々な細かい処理手続きなど誰がしたのでしょうか・・血縁関係でなければ処理手続きできないこともあるので・・
冒頭にも書いたように、勝手に独りで故人になるのは仕方ないとはいっても、後の処理は誰かがやらなければなりません。誰も身寄りが居なければ地域の行政機関が負担することになるとは思いますが、アパートの生活用品衣類や家電などは処分整理できないでしょう。(手間も料金もかかる為)
現に元父借家の隣宅は7年前すでに故人になっていて空き家になっているにもかかわらず、今だに衣類や家具等がガラス越しに見えてました。(おそらく7年以上前に故人になって誰も整理するべき関係人がいないのでしょう)こうした場合、借家の場合は結局大家さんがリフォームまたは解体の時にやることになるので、大家さんも大変でしょう。
昔と比べて近代は大家族というのも無くなって一人っ子少子化が進み、これから益々孤独が多くなっていくと思われます。
家族・子を持たなければ自分だけの自由な人生を生きていけるでしょうけれども、親も兄弟もなく孤独な立場であったなら誰も家のかたずけ(遺品整理)をできません。親しい友人や知人がいたとしても、諸々の細かい手続き処理・整理という負担をできるでしょうか?
故人の各種届出(健保や年金・所得税住民税)や公共光熱費支払い解約、サブスクやネット会員の解約、携帯や通信費の解約、ネット銀行やクレジットカードの解約、車の廃車手続き、保険の請求申請・解約手続き、ローン等など、このように様々な細かい処理までいくら親しかったとはいえ友人や知人にはできないと思います・・まして最近はIDやパスワードに厳重となっているわけですし・・
友人知人はいるが、身寄りとなる親族がなく独り身の場合で病気入院などしていて命の残りが分かっている人には、最近は【死後事務委任契約】という法律事務所に依頼しておく後見人のような制度があるようですけど、あくまでも事務手続き関係の処理のみです。
成年後見人になった法律事務所の弁護士・行政書士が、アパートの部屋の天井に度々作られる蜘蛛の巣を綿菓子にする様な細かな清掃するでしょうか?たとえ気が付いても親族並みの細かいことまではしないでしょう。あくまでも仕事としての範囲内であって、情が入った自分の親族ではないのですから・・
まぁ自由に気ままに生きてきた独り身の人間にとって、自分の終わった後のことなど「関係無い、知らね~」という感じで考えていない人がほとんどだと思います。(すでに自分ではできないし、責任も負わなくていいので)
ましてや突発病や事故などの突然死の場合は日ごろ考えてもいないでしょう。特に身に異変がなければ、当然に来週も来月も自分にはあると思っているはずですから・・
今回、7年間にわたって元父の様々な面倒・世話をしてきて、そして最終的な処理整理や手続きを済ませましたが、最後にまとめで記しておくと
「運よく子孫があってラストの7年間様々な世話をしてくれ、全ての後処理も綺麗にやってくれた人がいて本当に運が良かったね~!」と・・今でもあそこに寝ていれば言ってやりたいことで
あれから40年間も勝手に生きてきたにもかかわらず、介護老人になっても放置されることもなく我がままでも最後まで介護してもらえる方々もいて、そして何の苦労もなく何の苦しみもなく眠りの続きみたいに最後は逝けた彼には本当に羨ましいほどの運の強さを感じざる負えませんでした・・
同時にこんな人間だったとしても、その最後まで苦労をすることが罰として与えられるわけではないんだなぁと、この世の不条理を痛感させられるものでした・・
世の中には堅実で良い事をして生きてきた人であっても、最後は孤独で誰の情もなく遺品整理さえしてもらえない人がいるかもしれない、にもかかわらず我が元父とは何が違っていたのでしょうか・・
もし彼に子供も居なかったら、誰が7年前から最後まで世話や整理をしたのでしょう・・
とにかく、独りでは何もできなくなった時の世話や細かい後処理・整理は誰かに助けを求めることになるわけですが、それを委ねられる者にとっては大変なことなのです。