先日、今から30年くらい前に録画保存したビデオテープを押入れから見つけました。
それは1991年の終戦記念にTVで放映された「未来から落ちてきた男」というタイムスリップドラマでした。
今回はこの懐かしの終戦記念ドラマ「未来から落ちてきた男」から、戦死した叔祖父を想う記という題で綴っておきたいと思います。
その昔から仏間の長押に挿してあるの写真額、その中の一人は私も逢ったことがない軍服姿で写る祖母の弟(叔祖父)です。
祖母が生前、私に言ってたのは「この写真は太平洋戦争で戦死した私の弟だよ・・」
「東シナ海を輸送船で進んでる時に、潜水艦によって撃沈されてしまったんだよ・・」
少年だった私が祖母から聞き、今でも覚えているのはその話でした。
軍服姿で兵隊帽をかぶり凛々しく写っている叔祖父は、まだ若き青年です。
この叔祖父のような多くの尊い若い青年らが戦争によって失われてしまったことは、今では遠い遠い昔の歴史になってしまいつつあります。
このドラマは戦時中の時代へタイムスリップした宇宙飛行士が、若き日の父に出遭うという物語になっています。
もし、自分が戦時中にタイムスリップしたなら、この写真の大叔父に逢って「東シナ海行きの船には乗るな!」と伝えられるのにと思ってしまうのでした。
叔祖父の軍服姿は、まるでこのドラマに登場するノブオ(三上博史)の若き日の父・健次郎(中井貴一)にどことなく似ているのです。
それではこのビデオを観ながら、ドラマのあらすじをみていきましょう。
【あらすじ】
1991年 アメリカのアトランタ
ある家に1台のリムジンで訪れた老人は、庭にいた少女に
「昔、ここに私は住んでいたんだよ」と話した。
飼い犬のミスティが、何故かその老人に嬉しそうに近づく。
少女は疑いもなく家に招くと、老人は飾ってある家族写真を見つめた。
「パパは亡くなってしまったの・・」と少女が言った。
時は2週間前のこと・・
上野ノブオは宇宙飛行士で、妻のスーザンと娘の3人家族
近いうちに再び宇宙へ飛び立つ仕事が入っていた。
ある時、スーザンが「ブレスレットが突然に切れてしまったのよ・・」と不安げだったが、ノブオは特に気にせず「戻ったら、新しいのを買ってあげるから・・」とスーザンを宥めた。
スペースシャトルの打ち上げが開始され、ノブオを含む3人の宇宙飛行士が地球の大気圏外へ向かった。
宇宙での任務は順調に進んでいるようにみえたが、何かの異変が彼らに迫っていた。
シャトルのコントロール異常によって機体は地上へ落ちていった。
気が付くと、シャトルに乗った飛行士3名は何処かの砂漠の様なところに不時着していた。「ここは何処か?」
見渡すと、丘の向こうに少年らしき姿が見えた。
追いかけようとしたその時、大勢の兵士が現れ彼らの方へと向かってきた。
兵士らは見たこともない飛行物体に「アメリカの新型機」と悟り、3人を捕らえる。
ノブオは「どうやら、ここは日本のようだが昔の時代みたいだ!」と気づく。
立派な軍服を着た健次郎は、戦死した兄の嫁である裕美子を駅で迎え、実家に連れてきた。マニラから帰還していた健次郎は再び戻る希望を出していたが、通訳係として捕らえた3人のアメリカ人を調べる任務を命令される。
捕らえられたノブオは、健次郎からの取り調べ中になぜか彼に懐かしさを感じる。
「だから、戦争は半世紀も昔に終わったんですよ!」
説明しても誰も信じるはずもなく、録画記録を見せることになった。
大気圏の様子や青い地球の姿をVTRで健次郎や軍人らに見せると、彼らは驚くばかりであった。
しかし、それでも戦争で負けた歴史は誰も納得はできなかった。
スパイにしか考えられない3人の前で、健次郎は捕虜の一人を処刑した。
ある日、収容されていた町に空襲が迫った。次々と町は炎に包まれ、人々は逃げ惑う中、ノブオらも逃げ出そうとした。しかし、飛行士の2人は見つかって撃たれてしまった。
どうにか逃げられたノブオは民家へ逃げ込んだ。偶然にもそこは健次郎の家で、家に残っていた裕美子が助けてくれる。
裕美子は警察の目が届かない別の島にある家へ、ノブオを連れていくことにした。
ノブオは裕美子に事情の全てを話した。しかし、そんな話は裕美子にとっても夢の様な話に思える。
島の隠れ家で、ノブオは「オーバーザレインボー」という曲をいつもの様に口ずさむ。
それを裕美子に聞かれる 「その曲は?」
「亡き父が好きだった曲らしいのです・・母がいつも言っていました。」
「お父さんの名前は?」と裕美子は尋ね、「健次郎です」と答えると
裕美子は真剣に「他に何か特徴は覚えている?」
「左腕にところにキズがあったそうで・・」
それを聞いた裕美子の顔色が変わった。その直後、警察と共に健次郎が追ってきた。
船で連れて行かれるノブオに向かって、裕美子は叫んだ。
「それが本当なら、その人はあなたのお父さんよ~!」
それを聞いたノブオは「どういうことだ?」と困惑だった。
ノブオはスパイ容疑で処刑されることになった。担当するのは健次郎だった。
「義姉が叫んでいたことは、どういうことだ?」
「あんたは、俺の父親ということだ!」
当然に信じはしない健次郎
「義姉、裕美子さんを広島から離れさせて!広島が危ないんだ!」
8月6日の朝、広島は閃光に包まれた!
戦争が終わったある時、ノブオは健次郎と民家の居間で話をしている。
「お前の父は戦後どうなったんだ?」
「ジャズなどの曲が好きで、アメリカに渡ったらしいよ」
その後、ノブオは健次郎の一言書いた手紙を手にした。
書かれていたのは「俺はお前の言ったことを信じない」だった。
ノブオはシャトルが落ちた場所へ向かうが、そこには何も無かった。
原爆が落ちた頃、ノブオたちが乗ってきたシャトルは突如姿を消したのであった。
冒頭に戻り・・
老人と少女が庭へ出ると、スーザンが戻ってきた。
「このお爺さんが、前にこの家に住んでいたんだって!」
「そうなんですか、お茶でもいかが?」スーザンが招くが老人は遠慮しリムジンで帰ろうとした。
愛犬ミスティだけが、この老人のことを知っていた。
車が出発すると同時に、スーザンは写真前に置かれたブレスレットに気が付いた。
急ぎ追いかけるスーザンだが、車は走っていった。
老人は2週間前に宇宙から戻って来なかったノブオだった。
「ここに戻ってくるまで、ずいぶんと月日がかかったよ!」
・・完・・
当時の懐かしい俳優、三上博史と中井貴一、そして田中好子の出演が観られました。
砂漠に落ちた本物そっくりのスペースシャトルも良くできており、当時としては凝っていた作りだったなぁ~!と思いました。
たいていのタイムスリップものをみると、物語の最後には元の時代へ戻れて終わるのが多いですが、この物語では結局 主人公は元の時代へは戻れなかったようです。
そして、そのまま時代を過ごし1991年あの「2週間後」まで待っていたという、このラストに「なんとも惜しい&虚しさ」を感じさせるものでした。
このビデオを観た後に 和室にある叔祖父の写真をもう一度眺めると、祖母が呟いてたもう一つの言葉を想い出しました。
「この子は、何のために生まれたんだろうね~?」
「せっかくここまで育ったのに、何も将来をやれないまま終わるなんて・・」
そして私も、その時 祖母と同じことを呟いていました・・